ループ・ザ・ループ
    
     

ループ・ザ・ループはシャトルループに似た往復型の垂直ループコースターで、第1号機は1979年に東条湖ランドに設置され、以後、国内で計6基が稼働することとなりましたが、閉園等により数を減じて、現存するのはこのルスツの他、仙台ハイランド、サントピアワールド(新潟県)の3基です。いずれも1980年代初頭頃の製品なので、だいぶ老朽化も進んでいることと思われ、「絶滅危惧種」の筆頭にあげられる絶叫マシンです。製造メーカーは明昌特殊産業---現在のサノヤスヒシノ明昌社です。(コラムの「ループ・ザ・ループとアトミックコースター」を参照)

1979年といえば、1977年にはシャトルループが世に誕生し、それがモデルチェンジしてflywheel -typeとなったのが79年、日本にこれが上陸したのが同じ79年ですから、このループ・ザ・ループが当時いかに先進的なマシンであったか、ということは容易に想像がつきます。

どう考えてもシャトルループを参考にしたものと思われますが、当時世界的にみても画期的といえたシャトルループを、極めて短期間の間にまねて、日本独自の先進的絶叫マシンを作り上げてしまうという、いかにも「日本的な」技術力というのは、ほんとうに素晴らしいものだと感じます。(ただし、「シャトルループをまねた」のか、はたまた逆なのかについては実際のところは不明で想像の域を出ません)

余談になりますが、この1979年には、同じ明昌特殊産業は、アロー社のコークスクリューに倣った「ジェットスパイラルコースター」を世に送っており(1979年4月びわこタワー・・・これが国産初の宙返りコースターと思われる)、当時、この分野においても、きわめて精力的に「世界を目指したモノ作り」という仕事が行われていたことがよくわかります。

コースレイアウトはシャトルループ様のコースの片側が巻き上げ(ファーストドロップ)の斜面となっており、これを前進で巻き上げて、最高点に達したら、バックの下りでスタート。駅舎を通過してバックで垂直ループ回転、さらに反対側の登りを最高点まで登ったら、前進でドロップして再びループを回り、駅舎を通り越して、再度巻き上げの斜面を少し登ったあと、駅舎に戻ります。

このピンとそそり立つラインを前進で巻き上げて、バックで落下してループ・・・というと、そう、思い出されるのは、かの伝説的絶叫マシン「ムーンサルトスクランブル」です。ムーンサルトスクランブルは1983年、同じ明昌社の作品で、このループ・ザ・ループのループ部分を修飾して全体を折り曲げたような形になっており、おそらくこのループ・ザ・ループが「原型」となっているものと思われます。

   

      
ループ・ザ・ループの駅舎

ルスツリゾートのマシンの駅舎はどれも、簡素で飾り気のないものが多いです。ちょっと見ただけでは、あるいはかなり近づいても、乗り物の名前は目に付きにくいです。

このあたりまで来て、ようやくこの程度の掲示があるだけです。
    
ハーネスの色が消えてしまっているところなんかに「歴史」の重みを感じたりします。

あと、ルスツでは荷物置き用に、この「100円ショップ」で売っているような「カゴ」がよく用いられています。

   
   

巻き上げのサイド

先の写真とは反対のサイド。こちら側は主に巻き上げ専用なので、かなり直線的なラインです。

     
巻き上げ

かなり勾配が急峻に写っていますが、実際は上↑の写真のイメージくらいかな。

もう少し先まで登って最高点となります。

最高点に達して、スタート(切り離し)するときには、「ガシャン!」というような鈍い音が周囲に響き渡ります。音だけ聞いていても、けっこう怖いです。

   
      
バックでファーストドロップを下って加速した後の第1ループ回転というのは、アトミックコースターも同様なのですが、普通の垂直ループと違って、頭部、背部などにかかる負荷のイメージが違って、一種独特の感じがします・・・この違いというのは言葉ではうまく表現できませんが。(シャトルループのバックでの第2ループは、スピードも少し落ちているので、それともまた異なった印象なのです)

   
   
巻き上げと反対のサイド

   
けっこう、ラインぎりぎり端まで登ります

    
走行感は全体に振動や音も激しく、ちょっと粗い感じで、否応なく時代を感じさせるものです。

類似でほぼ同年代の国産コースターである泉陽の「アトミックコースター」のほうが、これと比べるとやや「滑らかな感じ」がします。

2回目の前進ループはちょっとスピードも落ち気味で、富士急の「ダブルループ」の2つめのループの印象に近いです。

   

   
ループ・ザ・ループの巻き上げの仕組み

今どき、ちょっと珍しいと思いますので紹介しておきます。

巻き上げのところには、左下の写真青矢印のように引き上げ用の台車があって、これに連結して引っ張り上げるというものです。(多分、ムーンサルトスクランブルも同様のメカだったような気がします)

このようにケーブルで引き上げます。だからまるでケーブルカーみたいですね。引き上げの最初の瞬間には、車両はまだ登り坂に十分乗っていないため、ここでケーブルが一気に緊張すると、角度の関係からこのケーブルが浮き上がって、バンバン音をたてながら踊るようにして暴れます。今どきのマシンでは決して経験することのできない「ワイルド」な雰囲気が漂う瞬間です。その様子は初めて見ると、びっくりしますよ。

   
ケーブルと台車

台車には、ひっかけるためのフックみたいなものが付いていて、ここに車両側に下から引っかけるような形で台車と先頭車両を接続するわけです。

最高点まで達したら、車両の先端が少し浮き上がるような仕組みになっているらしくて、このフックからはずれて落下がはじまるということです。(スタッフの人の話)

先にも言いましたが、はずれてスタートするときには、ガシャン!というような、すごい音と振動が発生して、ここでも「ワイルド」な感じを味わうことになります。(アトミックコースターの場合は、「音もなく」という感じで滑り出すので、そこは大きな違いです)

   
まとめ

いろいろな点で古さを感じさせるコースターですが、先に消えてしまったムーンサルトスクランブルの面影を偲ぶことのできる、味わい深いコースターです。

何しろ、歴史的に見ても大切な国産コースターの一つであり、数も少なくなってきましたから、少しでも長く生き残ってもらいたいと思います。

純粋に絶叫マシンとして見ても、現在のレベルにおいて、特に不足することなく楽しめます。

    

   
   
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