PYRENEES
ピレネー
全長 1234 m
最高速度 100 km/h
最高点の高さ 45 m
所要時間 3分15秒

ピレネーは、スペインとフランスの国境付近に位置する名高い山脈「ピレネー山脈」の名を戴いた、世界最大級とされるインバーテッドコースターです。

世界のことはよくわかりませんが、日本国内でみると、確かに最速だし、長さもF2(那須ハイランドパーク)やブラックアウト(鈴鹿サーキット)の約2倍ほどあって最長だから、まちがいなく国内最大とは言えるでしょう。

    

コースレイアウト

(1)ファーストドロップ
(2)(4)
垂直ループ
(3)(8)ゼロGロール「ひねり回転」(進行方向の軸まわりの回転)
(5)(9)(10)ピット地面を掘って低くなった部分をすれすれに通過
(6)コブラロール垂直ループを2つ合体させたような形で、ひねりも加わる
(7)スパイラルインターロックループ:登りの水平ループで、垂直ループの中を通る

(ゼロGロール、ピット、コブラロール、スパイラルインターロックループ等の呼び名はオフィシャルサイトに掲載されている「公式」なものです。)

     

このピレネーは、B&M社の「インバーテッドコースター」で、日本国内では、同社製の類似機種が他にエキスポランド(オロチ)と姫路セントラルパーク(ディアブロ)の2箇所にあります。これら3機種はレイアウトを構成する基本コンポーネントはおおむね共通ですが、ピレネーが「垂直ループ2つ+コブラロール」という構成を持つことや、高さ、最高速ともに他をしのぐ数値を出していることから、最もハードな機種ということができると思います。

    

ENTRANCE

空いてますね〜。土曜日です。この小屋みたいな建物は、中が広大な待合いスペース(行列をつくるところ)になっているのですが、現在では、そんなに並ぶことはないので、この小屋の部分は素通りしてプラットフォームのほうへ進みます。ちょうど西武園のループスクリューコースターの待合所と似たような運命を辿ったわけです。

私がピレネーに乗ったことがあるのはいずれも土曜日だけなのですが、その経験の範囲内では、「乗車待ちの列」というのはまず存在せず、逆に集まる人が定員(32人)に遠く及ばないため、「ある程度まとまった人数の客が集まるまで待たされる」といった状況が普通のようです。そうです、ピレネーが客を待っているのです!だから当然、乗り放題、といえます。

しかし、そんな状態だから、実際の運行は、15分に1回程度の運行になっているような気がするので、空いていて乗り放題とは言っても、「なかなか動いてくれない」といった印象も。だから写真を撮るのも大変です。これが平日だったらどんなか?と想像すると恐ろしいくらいです。

「巻き上げ〜ファーストドロップ」側

写真左下の岩のようになっているところが、スタート駅舎です

ファーストドロップ→垂直ループ→ひねり(スクリュー)回転というところまではオロチ、ディアブロにも共通。さらに、ひねり回転に続いて第2垂直ループとなるところまではディアブロと同じです。

その他、この写真には終盤の部分も含まれますが、そこでは意外にアップダウンのうねりが激しいのと、ファーストドロップの下で急旋回(左カーブ)しているという変化に富んだレイアウトがわかると思います。終盤で駅舎の岩山の横でドロップするところでは地面を掘った造り(「ピット」)になっています。

巻き上げで少し高度が上がると、このように周囲の緑あふれる自然環境が見渡せてすばらしいです。伊勢志摩の海も見えます。(この方角だけでなく、360度ぐるりとこんな感じの立地です)

   
   
中間の部分

序盤の「ファーストドロップ〜垂直ループ〜ひねり回転」に続いて、写真右からこの部分に入ってきて、第2垂直ループとなります。左へ抜けて、コブラロールへと進む中間部分です。さらにコブラロールを回って戻ってくると、写真左から入ってきて、こんどは1回転の水平ループを回って、写真右へ抜けて行きます。さらにこの部分にはラストのフィニッシュ前、すなわち2つ目のピットから駅舎直前の右回りのヘアピン状カーブ(これも一種の水平ループと言っていい)が見えています。

ここに見られる第2垂直ループにからむように配置された水平ループは、「スパイラルインターロックループ」と呼ばれる個性的なレイアウトで、見た目のインパクトを加えるのに大いに役立っています。

   
   
コブラロールの部分

これは、ファーストドロップ側から最も遠い、「反対側の折り返し点」といった位置関係にあります。こういった配置はオロチと同様です。写真上のラインから入って、手前(下)のラインから右へ抜けて行きます。この部分も地面を掘り下げた「ピット」になっていますが、最後のところの連続ピットに比べると、実際のインパクトは少ないと言わざるを得ません。(よっぽど注意していないと気づかないかも)

        
  
***それではまた、最初から順を追って紹介します***
        

ファーストドロップ

まずは、45mからのファーストドロップです。右に急カーブしつつドロップするので、外側に振られる動きも同時に発生します。これは吊り下げ式コースターにおけるドロップの「お決まり」みたいなものです。下ったところで最高速の100km/h。これはかなりスピード感があって豪快です。

オロチ、ディアブロやさらには「F2/ブラックアウト」系などの他の吊り下げ式コースターと比べると、このファーストドロップは明らかに「こいつは、違うぞ!」と確信させてくれる迫力、スピードがあります。

   
           
第1垂直ループ

時速100kmに加速しての垂直ループは迫力満点。しかも高い!高さ33mとのこと。

大きなファーストドロップの後の、これまた大きな急上昇なので、非常にダイナミックです。

    
   
   
ゼロGロール(スクリュー状ひねり回転)

これもかなり高い!そして、次の第2垂直ループに至るドロップもかなり落差が大きいことがわかります。

   
   
ちょっと別の角度から

  
  

第2垂直ループ

ゼロGロールからドロップして、この「スパイラルインターロックループ」を構成する第2垂直ループとなります。ここまでの流れはディアブロとまったく同じなのですが、何しろスピードが格段に違うのと、高さ、落差も大きいため、非常に激しい、迫力のある「連続攻撃」となっています。尚、垂直ループと水平ループがインターロック(組み合わせ)しているということ自体は、乗車している際にはほとんど何も感じられないので、特にプラス効果はないと思います。あくまで、外見上の効果でしょう。

    

この第2垂直ループを抜けると、コースは少し左方向に折れる感じになって、コブラロールへと向かいます。

   
   
コブラロール

コブラロールは、このように外観がコブラの頭みたいに見えるのでそのように命名されているコンポーネントです。垂直ループ旋回とスクリュー状ひねり回転をミックスさせたような動きで、吊り下げ式コースターの「醍醐味」が味わえるコンポーネントと言えます。前半と後半ではひねり回転の方向(左右)が逆になっています。

このコブラロールの後半を水平ループにすると、「F2/ブラックアウト」系の後半のターンになります。さらには、「F2/ブラックアウト」系の最初に出てくる「垂直ループ+スクリュー回転」にも似ているところがありますね。

   
   
自分が乗ったところを想像してください。

   
   
「ファーストドロップ→垂直ループ→ひねり回転→垂直ループ→コブラロール」と連続するわけですから、ここまで来ただけで、もう頭の中は「フラフラ」、「ヘロヘロ」みたいな感じになってしまいます。

   
水平ループ

コブラロールを抜けると、再び中間部にもどってきて、この水平ループです。まだかなりスピードがありますから、この水平ループもかなりの遠心力を伴って豪快な感じを受けます。「登りの水平ループ」であることにも注目! まだまだ勢いがあります。

   
  
水平ループの後の大きなドロップ

水平ループもかなり高い位置にあるので、そこから地面に向かって大きくドロップすることによって、終盤のスピード感を持続するための加速をするわけです。

   
   
第2のゼロGロール

上↑のドロップにつづいて、この「ひねり回転」。ロールしているだけでなく、同時にキャメルバックのようなアップダウンを伴っています。

   
  
ここを抜けると、ファーストドロップの下方まで来て、折り返しの左旋回をして、フィナーレの連続ピットへと続きます。

   
   
連続ピット、その1

このように地面が掘り下げたようになっていて、地中に消えるようになるのですが、ここは本当に地面にぶつかりそうな気がして、瞬間、思わず脚をひっこめるように体が反応してしまいます。

   
  
   
  
横から見ると、このように地中に消えてしまいます。これを抜ける時に、前方の斜面に脚がぶつかりそうな気がしてスリルを感じるのです。

   
   
連続ピット、その2

最初のピットで「ワォ!」とアセった後、ちょっと登って、またすぐさまドロップして、この2番目のピットとなります。ここも同様に出るところで地面に激突しそうな感覚に襲われて、スリル満点です。しかも、レイアウトとしては連続のアップダウンになっているわけですから、躍動感もたっぷり。

  
   
最後の水平ターン

駅舎にすべり込む直前の右ターンなのですが、これがまたなかなかいい!ふつうこういうところは、駅舎の直前なのでゆっくり回って「終わり」となるのですが、ピレネーは違います。こんなところでも、まだスピード感豊かに「急旋回」という感じで、体が水平方向へと振られ、比較的強い遠心力を感じます。外から一見しただけでは決してわからない、隠れた「見どころ」のひとつ。(赤矢印は2番目のピット)

この水平ターンを回ると、すぐに駅舎となるので、最後はかなりの「急ブレーキ」といった感じで終わります。ほんとうに最後の最後まで楽しませてくれます。まるで「尻尾の端まであんこの詰まった鯛焼き」みたいな感じ。

   
         
まとめ

距離も長い、時間もたっぷり、その中に、垂直、水平ループと「ひねり回転」、コブラロールが、バランス良く配置されて、まさに「息をつくヒマもない」といった感じです。そもそも持ち合わせている大きな高低差を存分に活かして、スピード感、躍動感にあふれ、それが最後まで持続してダレるところなど微塵もありません。特に最後も、スリル満点の連続ピットから急角度の水平ターンを経てフィニッシュに至るため、「最後に盛り上がって終わる」という最高のレイアウトとなっています。全体として「文句のつけようがない」完璧なコースターだと思います。

ブラックアウトなどに比べると、ただ振り回すだけでなく、しっかりしたコースターとしての走行感も味わえます。特に、絶妙なレイアウトによってもたらされる「アップダウンのダイナミックさ」は他の機種にない大きな魅力です。文句なしに楽しめる、すばらしい「名機」といえるでしょう。

ピレネー山脈の山と雪をイメージしたという、その外観も良いし、最高点からの周囲の緑あふれる景観もGOOD。

現在、日本のコースター、絶叫マシンの最高峰は?と聞かれれば、「フジヤマかピレネー」、と自信をもって言えます・・・奇しくも両方とも山の名前がついたコースターですね。

でも・・・こんなに素晴らしい乗り物なのに、実際に利用する人は非常に少ないのが現状のようです。

どう考えてもロケーションが良いとは言えないので、他に目立った乗り物がないこのパルケエスパーニャにわざわざピレネーに乗るためだけに来る絶叫ファンというのは決して多くないでしょうし、一方、一般的なパルケエスパーニャの客層では、このようにハードなマシンは、まず利用する人は少ないと思われます。だから、パルケエスパーニャには申し訳ありませんが、この場所にこれがあるのは、まったくもって、「宝の持ち腐れ」と言わざるを得ません。そういった点が残念です。

    

          

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