アクアウィンド
   
2004年4月に新設された、ユニークなローラーコースターです。製作したのはドイツのゲルシュトラウアー社 Gerstlauer Elektro GmbH。同社製品としては日本初上陸という価値あるコースターです。

ゲルシュトラウアー社の創設者 Hubert Gerstlauer という人は、もともとシュワルツコフ社の要職にあった人でしたが、1981年に独立。そして1980年代後半には、第一線を退いたアントンシュワルツコフがZierer社やBHS社と協同製作を行ったBavarian Mountain Railroad (BMR)などの作品において、このゲルシュトラウアー社は、電気や空気式のシステムを提供していました。さらに1992年に同社はかつてのシュワルツコフ社の施設や熟練技術者を獲得することとなり、その後のアミューズメントライド製作メーカーとしての確固たる基礎を固めたということです。

ですから、Gerstlauer 社というのは、シュワルツコフ社のコースター製造のノウハウを人・物両面で確かに引き継いだ「正規の後継会社」と言ってもよいメーカーなのです。

全体としてのサイズが50m×22m と、非常にコンパクトに作られており、上記ゲルシュトラウアー社のオフィシャルサイトでも、このアクアウィンドのことを、「compact version of Bobsled Coaster」と表現しています(Bobsled Coasterというのは同社の主力コースターらしい)。

同じく、同サイトではアクアウィンドを2004年のNew Projectの一つとして紹介しているとろから見ても、これはこのラグナシアの立地に合わせて作り出した、カスタムメイドというか、オリジナルのコースターということです。だから、言い換えると、たぶん世界でここにただ一つのコースター、ということができるでしょう。

  コース全長
380m
  最高点の高さ
15m
  最高速度
55km/h

この数字だけ見ると、「なぁ〜〜んだ」、とか思っちゃう人も多いかと思いますが、大丈夫です!。  

   
アクアウィンドの舞台は、「遺跡風」の建造物。外には外壁だけ残っているような部分も見られます。VIVA PIAZZAの一番端にある入り口を入ると、まず薄暗い石造りの「前室」となります。ここは遺跡の地下の小部屋みたいなところで、壁には小さなランプが細々と灯り、薄明かりの中に壁に描かれたいくつもの壁画が浮かび上がって、ライドを待つしばしの間、知らず知らずのうちに雰囲気が盛り上がってくるのを感じます。

4人乗りの小型ライドに乗り込み、屋内部分からスタート。すぐ外に出て巻き上げとなり、下のようなコースレイアウトで走行して、また屋内の駅舎へ戻りフィニッシュです。

最大の特徴は途中に屋内部分があること。ただし、下のコース図を見てもわかるように、どこが見せ場、とか言えないほど、最初から最後まで「美味しいところ」が目白押しといった感じで連なっています。

   
        
前半〜中盤部分

青矢印が巻き上げです。ファーストドロップとそれに続く左旋回マウス様部分右回りの水平ループと、順を追ってみてください。

   
   
ファーストドロップ

このファーストドロップは、アクアウインドの大きな魅力の一つですが、「シュワルツコフカーブ」と言われる、急旋回しながらのドロップです。

BMR-X やライトニングコースターのセカンドドロップと同じタイプですね。ただしそれらより、スケールは若干小さ目です。

ドロップしながら左旋回して、旋回しつつ急上昇して、写真で右のほうのラインに戻ってくるというレイアウトです。

スペック的には大した斜度や落差ではないのですが、やっぱりこのひねりながらのドロップと、それに引き続く旋回というこのレイアウトは、スリルと楽しさを感じさせてくれるもので、「シュワルツコフの魔法」みたいなものを感じます。

それが21世紀の現在、新設されたコースターにちゃんと継承されているのを確認できるのは大変うれしいことです。

   
      
ファーストドロップの底

さらに左カーブしながら、この後、急上昇して、最高点に近いほどの高さまで登ります。このあたりの動きは、なかなかダイナミックです。

ここでは遺跡の壁の横をすり抜けるようなスリルも味わうことができます。

  
        
マウス様の部分

高い位置で、マウス系コースターに見られる、バンクのない180度旋回を計3回繰り返します。それほど激しい動きではありませんが、外に振られる「それらしい動き」が楽しめます。眺めもいいです。

   
     

壁の残骸みたいな突出部分の回りをぐるっと巡るようなレイアウトも、なかなか考え抜かれたもの。

この部分を抜けると、右カーブの下り水平ループとなります

  
     

水平ループから屋内部分へ

水平ループは1回転半ほどですが、回転半径が小さいのと、落差が大きいので、出だしはゆっくりですが、後半には次第に加速して、かなりのGがかかるようになります。

   

とりあえず「水平ループ」と呼びましたが、そんなわけで一般的な水平ループとはちょっと違う印象で、ただ「回る」というよりは、「うずを巻きながら吸い込まれるように落ちていく」といった感覚です。だから、「らせん状のドロップ」と表現したほうがより的確かもしれません。

   
   

   

屋内部分へ

ぐるぐるっと回って下までくると、左写真のように真っ暗な屋内部分へと突入します。

ここでは、突然、目の前に暗黒の世界の入り口が現れて、そこに突っ込んでいくことになるので、なかなかインパクトがあります。

ここで、かなり地面に近い高さで突入していることに注目

   
    
屋内部分

屋内部分は、コースはループ状になっていて、ほとんど真っ暗。そこにイルミネーションや水蒸気噴射など、BMR-X (神戸ポートピアランド)を彷彿とさせるような仕掛けが待っています。私は初めての時、偶然、BMR-X を初経験した1週間後にこのアクアウィンドに乗ったのですが、この屋内のdark部分では、「おお、これはまさにBMR-Xだ!」と瞬間感じました。

   
   
屋内部分を抜ける

このようにして、また屋外に出ます。下の方から屋内に突入してこの位置から出てくるので、屋内のループは「上りループ」になっているわけです。

(写真右の矢印↓は、フィニッシュ直前のところで水蒸気が噴出するのですが、その様子を示しています)

   

この出口のところには小さな滝のように水が流れ落ちる装飾があり、下は池のようになっています。こんなところもBMR-Xに通じる雰囲気といえます。

   
  

屋外へ出ると

屋内部分の出口からは、このようにちょっとしたドロップがあって、加速することによって、次の急バンクカーブに備えます。

こういう、いろいろ障害物の合間を縫うようなレイアウトになっていることも、楽しさを増す要素の一つです。(この先に見えるのが急バンクカーブ)

   
   
急バンクカーブ

80度くらいでしょうか。なかなかの急バンクで、ほぼ180度回るヘアピンカーブです。楽しいですよ!。

このあたりは、搭乗せずに外で見ていても、すぐ目の前なので、「見ているだけで楽しい」部分です。

   
      
キャメルバック

急バンクカーブ(写真手前)を抜けると、はもう先にはフィニッシュが見えていますが、その前に、まだ見せ場があります。まずこのアーケードみたいなのをくぐり、続いてキャメルバック越えとなります。

  
  
このキャメルバックを越えたら、ちょっとホップして、フィニッシュです。

先ほど写真中の矢印で示しましたが、このキャメルバックのドロップのところで、水蒸気が噴出してちょっと濡れるという演出がありましたが、2004年12月に乗った時には出ていませんでした。

    
こんなものも・・・

キャメルバックのすぐ外側には、このようなアクアウインドのライドを模したベンチ?が置かれています。コース敷地内からダミーのレールが引き出されており(上の写真参照)、ちゃんとそのレールの上に載っているという念の入れようです。もともとこの場所は「遺跡」という設定なので、これもその一部ということなのでしょう。遊び心のある演出が心憎いです。

   
   
夜のアクアウインド

夜はこんなふうにライトアップされて、より一層幻想的な雰囲気です。

   
      
まとめ

マウス系コースターと同程度の規模ながら、ローラーコースターとしての内容の充実度はすばらしいです。多彩な内容を盛り込み、しかもその一つ一つが小規模ながらも洗練されており、高い満足感が得られます。単に「コースレイアウトの妙」というだけでなく、遺跡風建造物との「融合」といった点でも「ぬかり」はなく、まさに「他の追随を許さない」といえるほどの完成度を感じます。

距離、時間的には短いし、絶対的なスピードや、高さ、落差は平凡なものであり、「凄さ」といったものを感じることはありません。しかし、最初から最後まで、とにかく「楽しさ」というものを感じ続けることのできるコースターであり、しかもその「楽しさ」をおそらく誰でも気軽に体験できるであろうことから、現在、国内では並ぶものが少ない、すぐれたローラーコースターだと思います。(これに対抗できるのは、札幌円山子供の国キッドランドの「ループ&コーク」ぐらいでしょうか)

たったこれだけの敷地面積の中で、これほどのコースターが作れるということは、今後、わが国の遊園地アトラクションを考える上で、非常に大きなヒントになりうる事だと思います。そういった意味でもこれは大変重要な「一作」だと感じます。

以前、サンダードルフィンに関して、「盆栽」という表現を用いましたが、これはそれにも勝る「盆栽的コースターの極み」と言ってもいいコースターです。

また、アントン・シュワルツコフがこの世に生み出し、残したものは、永久に生き続けるのでは・・・、と、そんなことを実感したコースターでもありました。

評価はもちろん、オススメ!!! です。みなさんぜひ一度乗ってみて!

   
     

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