これで解決!
ジェットコースターという名前の由来
   

私達が大好きな遊園地の乗り物、絶叫マシンの代表である「あの」アトラクションの名称は何でしょうかか?
そうです、現在の「日本語」ではジェットコースターと言います。

これは、jet coaster だから一応、英語じゃないか、と思われるかもしれませんが、そうじゃないんです。これは日本国内だけで通じる言葉です。そして、何と驚くことに国語辞典にも載ってしまっているので、今や、立派な日本語の単語(「和製英語」という範疇)と言ってもよい存在なのです。

アメリカ英語ではroller coasterです。coasterというのは、このアメリカ英語では「滑走用のソリ」という意味があります。これにroller(ローラー、すなわち円筒形の足車)をくっつけるということなのか、あるいはまた「大波、大うねり---rollerにはそんな意味もある」のように動くというのも掛けているののか、まあとにかく、roller coasterとなってはじめて遊園地の「あの乗り物」を意味するようになる、というわけです。このあたりは、ちょっと難しいかな?

一方、同じ英語でも、イギリス英語ではswitchbackというそうです。こっちは我々にとってはちょっと馴染みが薄いですね。これはおそらく、元をただせば近代型ローラーコースターの元祖ともいえるトンプソンの「スイッチバック・グラビティ・プレジャー・レールウエイ」に由来しているのでしょう。

では、なぜローラーコースターのことを、日本では一般に広く、ジェットコースターと呼ぶようになったのでしょうか?---これについてはきっとご存じの人も多いでしょう。

昭和30年(1955年)に後楽園遊園地開園と同時に、華々しくデビューしたローラーコースターがジェットコースターと命名されました。これが爆発的人気を呼ぶこととなり、その後、日本では各地にローラーコースターが広く普及し出したわけですが、その起爆剤ともなった元祖ジェットコースターの名が流用されるようになって、日本国中に浸透し、いつの頃からか、ジェットコースターというのがローラーコースターに代わって一般名のように使われることとなったのです。場合によっては代名詞だけでなく、もう個々の固有名詞としてもバンバン使われていますね。それほど日本人の中に深く浸透しているということです。

(これはアメリカでコニーアイランドの名機、サイクロンが大評判となって、その後、サイクロンというローラーコースターがたくさん作られたという話とちょっと似ていますが、もちろんアメリカではローラーコースターのことをサイクロンと称するというところまでは至りませんでしたが。)

さて、ここまではかなり有名な話であって、実はこのコラムの前置きに過ぎないのです。

       

それでは、いよいよ本題に入ります。

      

そもそも、その後楽園遊園地の「ジェットコースター」という名称は、

どうやって命名されたのでしょうか?

その由来は如何に?

       

---これについては、定説がなく、世間では何となくはっきりしない状態だったと思います。

このことに言及している記述をいくつか例として挙げてみます

たとえば

日本最大の遊園地情報テーマパーク」と自称する「遊園地ドットコム」では、当時流行っていたマンガから「ジェット」コースターという名前のコースターを作ったら大人気になったとかという話を載せています。

古典的名著「遊園地の文化史」の中で中藤保則氏は、当時テレビで放映されていた「スーパージェット」からヒントをえたといわれる、と記載しています。

「絶叫マシンパラダイス」の著者、細井正利さんは、当時日本で流行していたヒーローもののテレビ番組少年ジェットから命名された和製英語で・・・という説がまことしやかにささやかれているが、真実かどうかは定かではない。というか知らないので今度聞いておこう。と、そんな書き方をしています。

このように、一般にはテレビ、マンガ等からヒントを得ているのでは、という説が多いみたいですね。というか、どうも、誰もちゃんとした事を知らずに書いているような、そんな感じが多いです。

しかしながら、これらの説はどうも正しくないようです。

当時、昭和30年頃の時代で、「ジェット」の名が付く、テレビ、マンガなどで人気を博していたもの、というと、これはあの少年ジェットを措(お)いて他にはありません。ただし、この少年ジェットはマンガ本もテレビも、世に登場したのは昭和34年とのこと。一方、後楽園のジェットコースターは、昭和30年の開業時には、当初から「ジェットコースター」と命名されていたのですから、明らかに年代の前後が違うわけです。だから少年ジェット(テレビ、マンガ)説というのには大きな矛盾があり、正しくないことになります。

ついでに触れておきますと、中藤氏の言っていた「スーパージェット」というのは、どうも、さらに後の時代(昭和40年代)に登場した人気テレビアニメの「スーパージェッター」と混同しているようにも思われます。(これはこれで一世を風靡するほどの人気アニメだったのですが)

   

それでは一体、

 正解は、

 何なのか?

  

遊園地関係の書籍、サイトでこれをはっきり断定するのは、

本邦初かな?

           

正しくは、

     

ジェット機のジェット

に由来する命名なのです。

なんだ、「まんまじゃん!」と言われるかもしれませんが、
そーなんです

   

この話は株式会社東京ドーム広報室に私が直接お尋ねして調べていただき、回答をいただいたものなので、まあ、これを正解とするしかないでしょう。

まず、これに関連した当時の時代背景をちょっと解説します。

昭和27年(1952年)、世界初の実用ジェット旅客機「コメット」(英国)が就航し、まさにジェット機の時代の幕が切って落とされた、そういった時代でした。それまで旅客機はプロペラ機しかなく、ずっとすごいスピードが出せる最先端の乗り物・ジェット機の実用化によって、いよいよ人間が自由に簡単に世界を飛び回ることができる、そんな夢のような時代の到来を予感させる出来事だったわけです。

昭和29年には日本航空が初の海外線(ただしこれはジェット機ではありませんが)を就航させた年でもあり、この出来事もジェット機に対する関心をより身近なものにするのに一役買ったものと思われます。

     

そこから来るスピード感、そして響きの良さ等々から、当時、後楽園の社員の一人が、新しいローラーコースターの名前として、このジェット機のジェットを冠した「ジェットコースター」を提案し、それが採用された、というのが、事の真相だということです。

この後楽園のジェットコースターの設計、施工は明和工務店という会社が行っており、以前にはそちらのオフィシャルサイトでも、「ジェットコースター秘話」と題して、同様の由来を紹介していました。(ただし同社のオフィシャルサイトは2005年3月にリニューアルされ、これを機に、その記事は見られなくなっていますが。)

             

どうですか、ジェットコースターの名前の由来。これではっきりしましたね。

     

ところが、この話には今になってよくよく考えてみると「オチ」のようなものがあるんです。実は、調べてみると、昭和27年に初登場した世界初のジェット旅客機「コメット」というのは、就航1年を経過した昭和28年から29年にかけて、立て続けに3件の墜落事故を起こしてしまい、そのあたりで、「世界初の実用ジェット旅客機」というのは一度完全にポシャッているのです。このコメットの改良型が完成、再就航したのが昭和33年でしたが、その時にはアメリカ初のジェット旅客機が登場してしまい、以後、主役はアメリカに譲ることとなってしまったとの歴史があるのです。つまり出だしでかなり大きくつまずいてしまい、結局その失地を回復できなかったというわけです。

ですから、昭和30年の段階では、深読みすると、ジェットという名は、「初登場したものの、立て続けに墜落事故を起こし、この先どうなるか見通しの立っていない飛行機」といったようなイメージということにもなるわけで、新しく売り出す遊戯機械のネーミングとしては、実はちょっとリスクをはらんでいたともいえます。ただし、当時の社会は、今ほど情報が行き届いていなかったので、あまりそういったネガティブなニュースは広まらなかったのかもしれませんね。

しかし幸いなことに、コメットの改良型やアメリカの新鋭機が昭和33年に登場して、以後、ジェット旅客機は軌道に乗ることとなり、日本でも昭和35年には日本初のジェット旅客機DC8も就航の運びとなって、人々が夢に見たとおり、ジェット機によるスピード輸送の時代は着々と現実性を帯びてきました。このような流れとなったため、ジェットという言葉は、ジェットコースターの命名主が期待したとおり、スピードや夢としっかり結びついた言葉として、確固たる地位を確立することとなり、これによって「ジェットコースター」という名称自体も、現在のような地位に登りつめることとなったわけです。

ジェット旅客機初登場の後の、墜落事故頻発による落ち込み時期がもうちょっと長引いて、その復活がもっと遅かったりしたら、もしかしたらジェットコースターの名前は現在ほど普遍的で日本人に親しまれる名前には成り得なかったかもしれません。

今度、ジェットコースターに乗る機会があったら、今ここに述べたような、ジェットコースター誕生の頃の時代背景などをちょっと思い出してもらえると、いつもとまた一味違った楽しさをを感じることが出来るのではないでしょうか。

   

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